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絡め捕らわれる網膜 [乱歩地獄] 
遅刻寸前、予告編上演中の劇場に滑り込みで拝見([探偵事務所5]の前売りを買いに、時間ギリの中シネ・リーブルに先に行ったもんだから走った走った;)。

各監督・各主演俳優の妖しい魅力が漂う、濃厚な蜂蜜で喉を灼くような味わいのオムニバスでした。

4篇の、贅を尽くした映像美がエログロさと烈しい偏執の様を哀しく、でも詩的にまとめられた一つの作品と呼べるかもしれません。


乱歩を初めてちゃんと読んだのは、10年前の大学一回生の時、友達に誘われて近代文学を考察する学科生有志の課外ゼミに参加した時のテキストが[陰獣]だったんですね(だから誘われたとも言える…まんまと引っ掛かった訳ですが;)。
その後で[芋虫]を読んだのかな、確か。

[鏡地獄]はまた別の機会に読んだのですけど…その狂的な一途さに圧倒された記憶があります。


だもんで、乱歩の”危険な作品”には青春の思ひ出があるもので、映像化を知って以来、本当に楽しみにしておりました。
まぁ、夏に見た[姑獲鳥]が結構笑える出来だったんで、ちょっと[鏡地獄]には不安も感じてたんですけど;

上映作品は、幻想的な悪夢譚であり始まりと終わりを象徴する導入[火星の運河]、鏡の存在ゆえに己の美に溺れた男を描く[鏡地獄]、傷痍軍人とその貞淑な妻の反転した至高愛とその情交を窃視する男の物語[芋虫]、仕える女優への一途な愛ゆえに歪な所有を選んだ男の視界[]の4篇。
[火星の…]だけ短くて、後はだいたい30分くらい。濃厚です、脳髄がくらくらします。

全編に共通して登場するのは浅野忠信さん。役柄は色々ですが、個人的には[鏡地獄]での明智役がとても端正で、翳りというか憂いの艶があって好き。


各タイトルの感想は以下の感じ。ネタバレしてるかも、済みません;





火星の運河
無声? このタイトルだけ未読なんで、実を言うとまだ理解出来てません; とても意味深な永遠回帰のような、実験的な作品だったと思います。
まさに胡蝶の夢のような…境界意識は4篇総てに通じるテーマではあると思うんですが、一番それが幻想的に描かれていたかな、と。

鏡地獄
かなり、原作と違った解釈だったことにびっくり。期待してた鏡の球体はあっさりと流されてしまった気が;
それにしても…[ごくせん]で初めて成宮くんを見た時に感じた、「なんか色気のある男の子やなぁ」という感覚は正しかったとこのフィルムで確信。最近は好青年な役柄が多かったですもんね、でもこういう斎のような役柄の方がニンでしょう、多分。
それにしても、情交シーン自体はあんまりエロティックには感じなかったんですけど(や、R15で済まないくらいの場面ではあったんですけど)、女性の舌を噛むとか、口腔に指を挿入するとか…そういう場面での、背後の鏡面に映る己を意識してるという場面がとても背徳的でゾクっと来ました。二重の相姦というのかな…
明智役の浅野さんも、ちょっと陰性な感じで、従う小林青年も(この人も凄く抑えたエロティックさを感じました)儚くて。
ともあれ、あれだけ沢山の鏡を効果的に使い切ったということに畏れ入ります。
…浅野さんはさ、やっぱ短髪か、もしくは黒のストレートが宜しいと思います。こっそり主張。

芋虫
所有というのはエゴイスティックで、最も純粋な意思表示だと思う。愛するがゆえにその脚を手折り、腕をもぎ…視界すら認めたくはない。
これも原作とは少し解釈が違っているのですが…最後、泣きかけました; 行なわれていることはとても現実感のない、人権や道徳からは離れた行為のはずなのに、とても深い結びつきを突き付けられて動けない。
人の持つ獣性を、窃視することで鑑賞し干渉する男が欲しかったのは、その形骸だったのか心だったのかは見る側に委ねられるものなのでしょう。
覗く男を演じる松田龍平さんは、最後のあの衣装すらどうにかなっていれば様になっていたんじゃなかろうか、と。ちょっと思いました…;
女優さんも須永役の俳優さんも、真に迫った演技でした。
あと、映像になったメタ作品ってこんな感じなのかも、とも思いました。


浅野さんが二役を演じてます。ブリーフ一枚のセミ裸体での体当たりな演技が凄いです、でもコミカル。
厭人気味で人の気配だけでもアレルギーを起こす、その様に見ている私も首筋に爪を立てちゃいましたよ;
[芋虫]とは立場が逆の、同じ所有に関する物語ですね…カラフルだけど、だからこそ手に入らない夢。手に入れたと思ったらそれは、抑えられない腐敗の前にどんどん色彩を失って只のモノに成り下がる。
ぶっちゃけ、ネクロ…とも言えなくもない…満腹の状態での鑑賞はお薦めしかねます。
緒川たまきさんの演技がまた、凄かったです。


全体的に、俳優さんも女優さんも、凄い移入した演技で本当に引き込まれます。向こう側の視界が確かにそこにはあるのだと、エンドロール見ながら思いました。

カップルとか友達ととか…そういう他者と一緒に見るというよりは己の中の陰獣性を意識しながら独りで視ることをお薦めしたいです(ていうか、他人と一緒だと見た後気まずくないか、この映画;)。

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by yoiyamigentoukyou | 2005-11-19 21:06 | 映画も観る
眠りの塔は祈りて [ブラザーズ・グリム] 
崩壊する、という視覚的な破局が堪らなく好きだ。
それが映像であれ、小説の行間から立ち上るものであれ。

予告編を見て以来、公開を楽しみにしていた[ブラザーズ・グリム]を観て参りました。道頓堀にチャリで乗り込んでごめんなさい…。
上映時間ギリギリに飛び込んだので、パンフは粗筋しか浚えなかったのですが、結構、引き込まれました。


仏占領下の独、マルバデンという村落の森で発生した少女の連続失踪事件。魔物退治(実はペテン)で名を馳せていたウィルとジェイコブのグリム兄弟は仏軍の拷問魔・カヴァルディの監視の許、少女たちを取り戻す為に村の猟師の娘・アンジェリカの案内で眠れる女王の塔を持つ魔物の森を訪れる。

牙を剥く森、止まらない少女たちの失踪…やがて、兄弟たちは恐るべき儀式へと辿り着き……



[赤ずきん][ラプンツェル][眠り姫]…様々な童話たちが細かく裁たれ新しく継ぎ直された、キルトのタペストリーのような仕上がり。映像が綺麗で(時折グロテスクで)、勇敢さも切ない場面もあったりして、華やかでした。

枝や根を触手にして襲ってくる森の樹々の描写が本当怖い。
妹を貧困から亡くしてしまったという悔恨を持つからこそ徹底したリアリストで社交術に長けたウィルと、同じく妹を救えなかったからこそ逆にマルバデンの森の「本物の」異界・魔物に烈しく惹き付けられるジェイコブ…兄弟愛というか、補いながら歩んでいく兄弟の形が印象的。

上映直前にパンフで兄弟の写真を見た時、「弟役の役者さんの方がなんかハンサム?」とか感じたんですが、帰宅してパンフ読んでて納得。オファー時の配役と逆の組合せになってたんですね…でもって普段の役柄も今回とは逆らしく、自分の感覚も結構アテになるなぁ、と(苦笑)。

…ラストは、もしかしたら本当は悲劇だったんじゃないのかな、と。
パンフで読む限りかなり興行主と監督とで揉めたらしいですね。
魔は本当は人の心…欲、というか。そういう部分で、最後には助からない存在っていうのが出てくるのかな、と。


ネタバレになるんで書きませんけど、最後であのまま、あの人物は目覚めないのではないか、とハラハラしました。でも凄いしんみりさせた後、あの一言(笑)で一瞬にして劇場内の張り詰めた空気を緩和させたのは凄いと思います。 ←見た人なら通じると思うのですが。

だってもう、泣けたもん…想いが苦しくて。


また観てみたい作品です。
グリム童話に詳しいと、もっと楽しめるかと思います。

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by yoiyamigentoukyou | 2005-11-10 21:13 | 映画も観る