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マトリョシカの視界 [ジュウブンノキュウ]
端的に言い切ってしまうなら。
最後の一文でそれまでの物語世界を崩壊させ得るような、そんな強靭な意思を持つフィルムだと思う。


7年振りに再会を果たした、かつての高校野球部メンバーの9人。語らう過去は共有の記憶のはずなのに、何故か合致しない…やがて、9人は校庭から掘り出したタイムカプセルの開錠に取り掛かる。9人が持ち寄った、9つの鍵…しかし、鍵穴は10個。何が、誰が足りないのか?


記憶って何だろう?
記憶出来るって仕合わせなのかな? 哀しいのかな?

断片が埋まり、そこから零れ落ちた視界に。
知らないうちに泣いてました。
ぼんやり追い掛けてると…なんか矛盾した、捻子くれた結末に見えるかも知れないですね。


以下、ネタバレ込みでの雑感です。



七藝の入り口、写真に収めるの忘れました…凄い趣のあるシアターですよね、歓楽街にあるのが嘘のよう。
ついでにレイトだというのに子連れの家族客が居たり、老夫婦が居たり。謎過ぎる…

開演前、東條監督さんと、出演者の武田さんによるご挨拶があったんですが、スカンと忘れてて最後尾付近の席に着いてしまった為あんまり見てない…監督さんは何か、噛みまくってたような気がしますが。

「ミステリとかサスペンスとか、言われてるようですが、それだけでは無い作品を作りました」という感じの言葉を残されて去られたのですけど、観終った時、「正確な表現だな」と感じました。

洋館の一室での、台詞劇。徐々に重く圧し掛かる齟齬による不安と焦燥…結末の鮮やかな逆転性。
切れ味鋭く反転させて魅せるのが安部公房の視界だとすると、[ジュウブンノキュウ]の視界は錆びた刃による傷が後から致命傷と転じるような緩やかな反転という感触。

弟と一緒だったんですが、ヤツは順行で内容を受け止めたらしく、「面白かったけど全員記憶が変なん?」とのたまいました。
…確かにストレートに受け取ると、エンドロールで最大の齟齬が発生してしまう訳で(苦笑)。

一応、電車の中でミスリードの例を挙げて、最後のモノクロの視界が現実で、フルカラーの視界のが夢なんやと思うで、と言ってはみたんですが。

なんつーか、それが切ない。
一応、パンフ買い損ねたんで、公式サイトで確認はしたんですけど…合ってはいたけど、それだって正解じゃない(と思う。思いたい)。


自分の存在を、最初から無かったことに出来れば。
それが嘘だとしても…願い続けて真実になるなら。


建前の願いはホンモノ。
だけど忘れて欲しくないと云うエゴだってホンモノ。
詰まる処、脳に騙されずに生存することなんて叶わないイキモノだから。

それが沢山の、写真から零れてて。
それが凄く儚くて哀しくて遣る瀬無くて。





運んで良かった、出会えて良かったフィルムでした。
役者が新人で、先入観が持てない状態での鑑賞になったのもプラスに働いたんだと思うけど…身近に、友の死を経験してたからこそ、迫るものがあったんだろうな、と。

思います。
※当方、10人目の視点の存在を軸に鑑賞しましたので、多分というか大いに受け止め方がズレてると思われます。言葉が足りず、申し訳ありません;

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by yoiyamigentoukyou | 2006-11-24 20:50 | 映画も観る