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20061019 えん3 @BIG CAT

絶対に開演時間の設定を間違ってたと思う(苦笑)。
でも[えん2]に比べれば転換はスムーズだった。とまれ関西6デイズも此れにて終了ー、ロケッツ行けなかったのは残念だったけど、以外の大阪は全部運べたから満足!

参加バンド・演奏順≫
 rowthe ※OA。本当の表記は漢字なんですが外字なんで無理
 COALTAR OF THE DEEPERS
 PULLING TEETH
 ミドリカワ書房
 BALZAC
 ムック



前日にチケを見直してて、開演の遅さに「間違い…?」とか思ってたんですが…結局なんかダラダラと予定開場時刻に会場へ到着。慣れたもんでサクサクっと階段に行くも、なんか人少ない…

時間通りの開場でしたが、400番台だったのに開始10分くらいでもう入場出来てた(笑)。どんだけ皆またーりなんだ。とまれ、中に入ると全然余裕ーで柵付近が空いている。どの道バルザかムックが始まるまでは押しはなかろう、と踏んで上手側の中央柵付近にて待機。どの道ムック始まったら柵の中入るしね、闇朽での経験上(BIG CATの柵は小型のゴールポストをこかしたような形をしている)。

本編の開始は18:30ですが、18時からOAが始まるとのことで、その後の転換含め、そんなに待ったっていう感じのないイベントだったのが良かった。☆Pなんて転換に30分とか掛かってたからなぁ;

18:00 rowthe -ろうじ
もじゃーとした髪のvoさんは怖かったけど(笑。や、なんか動きが)、音は凄い好みだった。MCも礼儀正しい感じで、手を合わせながら発する。音のこう…なんていうか歪みというかうねりが凄くて、あームックさんが好きそうな感じ、とか思ってました。
特筆はギター及びベースの演奏スタイル。あんなに仰け反って首ぐらぐらさせて、上手側の黒崎さんに至っては瞬きすらしてない時が多かった…肩とか脱臼せんやろか;と思わず心配してしまった。rowtheさんはイベント名を[えんスリー]と発音してました。[さん]なのか[スリー]なのか[サード]なのか、毎回悩むんですが結局毎回答えが出ないイベント名(笑)。
SE+曲3つ+SE、で下手側ギター・篠崎さんに拠る告知…25分くらいのアクトでした。

転換は、色んなバンドのスタさん+バンドメンバーに拠ってわーっと。それでも夢狂さんが一番多く動いてたかな。マイクテストの時にちょこちょこ笑わせてくれたり(単に客が勝手に受けてただけなんだが)。
転換は大体、15分前後だったように思います。以下の開始時間は概算です。チェックはしてましたがメモとかしてないので。でも前後してても5分くらいの差だと思います。

18:40 COALTAR OF THE DEEPERS
音はデジ系ぽかった…降臨懺悔とプリントされたTシャツがインパクト大だった…voさんの声は変声器使ってるのかな、やけに高くて、デスヴォとの落差が凄かった。激しかったけど、ちょっと自分の好みからは外れていたので上手く説明出来ません。でもお茶目なvoさんやなーってのは感じました。客席は楽しそうだった。でもファンの方には30分というのは短すぎた模様。イベントだから仕方ないとは云え、その燃焼不良感はよく判る…

17:25 PULLING TEETH
3ピース編成。なれどベースの重いこと(ベース自体も大きいのですが、音が)。曲自体は短いのが多いのかな、結構プレイされていて、終盤は畳み掛けるように激しいのが続きました。英語詩だったので何言ってるのかは判らなかったんですが、音はもう恰好良かった。
ベースの人は何回も台に乗って煽ってたし、あのベース持って移動しちゃうんだもんな、凄いです。

20:10 ミドリカワ書房
 保健室の先生 / リンゴガール / 母さん / I am a mother / 曲名不明 / チューをしよう 
 ※表記は正確ではありません、聞こえたのを印象で記しただけです。 判った範囲だけ正しました…でも間違ってるかも;

個人的に、今回のイベントでしんどいのはミドリカワ書房のファンじゃないか、と思ってたんですが…どうだったんだろう? 爆音続きのイベントの中、ご自分でも「ブレイクタイムだと思ってるんで」とMCされていたミドリカワ書房、毒気の効いた昭和歌謡テイストもあり、勿論ROCKさもあり…期待してた以上に楽しませて下さいました。個人的にムック以外では一番楽しみだったバンドなので、もう本当に楽しかったです。
いきなり爽やかなSEに、被さるのは録音による日記朗読。「ライヴをやった。」と過去形で始める当り、小憎い演出。「98%の客が僕のことを知らないようだ。このオッサン誰~?という表情をしている」という部分に大受け。「僕はおもむろに歌い始めた」と続き、保健室の先生です。歌詞内容は日活ロマンポルノだった(笑)。なんだ、すっげー面白いんですけど、ミドリカワ書房。
二曲やってMCの前に朗読が流れる。「リンゴガールをやって良かった」とか何とか。合わせて頷いてたりして。
下手側のギター? ベース?の人が、大阪生まれの大阪育ちということを話され、「君たちの先輩だよ」とか「お帰りなさい、は?」とか色々突っ込まれました。
「6バンドあって、僕らは4つ目…場所的にも音楽的にも休憩ポイントだと思うんで。皆さんも疲れるでしょ、座って貰っていいんですよ」とか気遣って下さりつつ、先日リリースされたミニアルバム[家族ゲーム]より、「歌詞が過激すぎてインストのみ収録となってしまった」母さん という囚人から母へ宛てた手紙の歌と、「母さんつながりなんですが、浜省のI am a father(この時、「皆さんお若いからご存知ないでしょう」、と元曲を流してくれました。歌ってはった…)」ならぬI am a motherという曲を作りまして」と母になる瞬間を描いたほんわかとした明るい曲をプレイ。

この母さん が凄い重い歌詞なんですけど、凄く良くて、本気で涙ぐんだ。そうして今日ライヴに運べて、こんな曲聴けて…それって本当、何気なくみえるけど凄いことだよな…と。折りしも出掛けに寝屋川の教員殺傷事件の判決を新聞とかで見てたから、余計にね…色々と感じちゃって。
「ROCkは好きですか」と煽りが入り、グラサン装着で何か速い曲を。再び朗読にて「最後は矢張りこれしかない。ミドリカワ書房きってのパーティ・キラー・チューン」とのことでチューをしよう。"血を流してる暇なんか無い、キスで平和になるんじゃないか"と、正確に言葉は記憶してないけど、なんかとても素敵な歌だと思いました。
「心斎橋kidsも楽しんでくれたようだ」と日記朗読で締め括りつつ(何とかを枕に独り寝だ、とか明日は松山公演だとかも言ってたような)、パフォーマンスしつつ去って行かれました(最後躓いてませんでした? 見間違いかな)。

20:45 BALZAC
盛り上ってました…が、矢張り私にはバルザの音は軽く聴こえる…ダイヴァーも居たけど、ムックと違って皆転がるの早いね(つか、よくあんな狭い間隔で転げるな…)。

21:35 ムック ※終演22:25頃

 新曲(クアトロ披露の方)
 蘭鋳
 茫然自失
 遮断
 ホリゾント
 商業思想狂
 メディアの銃声
 ロマンチスト
(カヴァー)
 謡声
 夕紅
 大嫌い

 ※10/20修正しました。夕紅と名も無き勘違いしてました、済みません;

達瑯は白のノースリのつなぎ? ミヤくんは黒T、ゆけさん黒ジャケに白Tイン。satoちは赤い服だったとしか記憶にないです。

SEの中、satoち、ゆけさん、ミヤくん、んで達瑯の順で、えん2の時は儚くともから始まったので、何となく今日もそういう感じで、希望としては中継で見たクアトロでの新曲が来て欲しいかなー、とじりじりとステージを見詰ていると。

来た! 重いベースの音、クアトロの新曲だ(・∀・)
生で聴くと結構激しいな…最後はTVで見た楽器音のみっていうのではなく"雨降り25時"を3回くらい、"暗い暗い(?)影法師"を3回くらい、で"影法師"だけ呟いてたかな…音源はどっちのヴァージョンになるんだろ。個人的にはライヴでは楽器音だけで〆て欲しいかな、その方が何か苦しくなる。

挨拶みたいなん、入ったのってここかなぁ?
出演して下さったバンドへの感謝とかまとめて云ってたような。「恰好いい」って言葉を何回か云ってたような記憶があるんですが…rowtheの名前が出てた気はする。

「らぁん…ちゅぅ…」とコールされて蘭鋳茫然自失と続く。肩車、壁、ダイヴァー…後方からの押しにモッシュでちょっと混乱して、慌てて柵の中に逃げました。なんていうか、中央柵付近とモッシュしてる人たちとの間にどうしても隙間が生じるんで、柵付近で頑張ってダイヴする人を押し出しても落ちるの; 本当、ごめんなさい…上手く押せた人も居たけど、何人か支えきれずに落としちゃった;

…ただ、なんか今回ムックの時、ダイヴの規制が厳しかったみたいで、何時もは割りと同じ人が何回か飛ぶんだけどそういうの見なくて「?」と思ってたら、どうも強制退場処置が適用されていたようです。

久々に聴いた遮断は、サビに来るまでタイトル思い出せませんでした;
遮断の前だったような後だったような…違うかもしれないけど、二回目のMC。「えん3、の締め括りでもあるし、「666」の一連の流れの締めでもあるし、69デイズ…関西6デイズの締めも兼ねているんで」と達瑯が云うと「やだー」の声が其処彼処から上がる。
なんか達瑯、うるさいとか云ってたけど、次のMCの時やったかも;

煽りが入ってコールがあって、新曲ホリゾント。聴き取れなかったらしく、一部で「何?」って感じの声が。
この時、全然達瑯声が通ってなくて、凄い唄うのが苦しそうだった。風邪らしいとはファンサとかで読んでたんだけど、この曲までは結構ちゃんと通ってたんで、思い出さなかったよ…何だかんだで達瑯、気管支弱いよね。ちゃんと自愛して欲しい。

ので、ホリゾントは曲調しか判らんかった。一曲目の新曲の方が自分の好みではあるけど、ホリゾントも多分好きな曲になると思う。続く商業思想狂はなんかよく判らん内に終わってた(ダイ禁にならんかな、ほんま)。
メディアの銃声も、声出すの苦しそうだったかな…この曲での達瑯の手の振りとか仕草がいつも印象に深くて。最後で、左手の指二本をこめかみに当てて、遠くを視るような表情で、撃つ振りをして終わったのが何かやけに記憶に残ってます。

「一回目のMCで感謝を述べて、二回目のMCで6デイズの締めのことを云って…(このMCで)言う事が無くなってしまったんですが」的なことを言ってたかなぁ…出演バンドを順番に読み上げ、「メンバーが好きで、声を掛けさせて貰ったら、皆さん快く受けてくれて」「恰好いいステージを見せて貰えて」みたいなことを云ってたような気がするんですが、色々捏造してるかも知れません;
「皆さんタフですね」とか言ってたかなぁ…「皆さんのタフさをムックが搾り取って帰ろうかと思います…絞り粕になって下さい…絞り粕(最後は笑ってた気がする)」と言って、暴れて行こうかー、って流れで。

始まったのはカヴァーのロマンチスト。ちょっと闇朽の時に見たのと合わせ方を変えてたのかな、"吐き気がするほど"のトコはミヤくんで、その後は二人で重ねてた感じがしました(上手側でミヤくんの正面延長上に居たんでそんな感じに聴こえたのかも知れませんが)。

謡声夕紅はもう…メンバー前進してたし客もぐちゃぐちゃだったんで、ほっとんど記憶にないかも。つか、後方から転がってきたダイヴァーが停滞しちゃって、丁度首で支える感じになっちゃってきつかった; 上手く送り出せたっぽかったんで良かったけど(でも、ダイヴが成功する=今回は退場だった訳で。最終的に失敗してた方が良かっただろうか…ちと悩む)。夕紅の最後の方の、達瑯と客側との掛け合いみたいなノリはいいなぁ、といつも思う。「ラストー」と大嫌い。どんだけ肩車が集まってんだ、みたいな(笑)。
まぁ、風物詩みたいなもんなんで肩車自体はいいんだけど、 上 で 咲 く な 。只でさえ壁になってステージ見えないというのに咲かれると隙間すら遮られて非常にイラっと来る(大人気ない)。第一周辺の人にぶつかるから危ないと思うんだけどなぁ…

今回は久々に手を合わせてお辞儀するミヤくん見れました。投げてくれたピックねー、結構近くまで飛んで来たんだよ…一人半くらい左側にね。次に飛んで来たのも一列前くらいだったし。スティックは一列後ろだっけ…ちょっと我が身の小ささが恨めしい;


そんなこんなで、イベント終了ー。
ロビー出たら珍しくドリンク空いてたから、さくっと引き換えて猛ダッシュで階段駆け下りて、チャリで10分ちょいという最短記録で帰宅しました…爆音で揺らされた耳には酷い仕打ちになってしまったらしく、久々に耳鳴りが;
半時間もすれば治まったけど、気を付けなきゃ。

やっぱりムックさんのライヴはいいなーと噛み締めつつ、年内での生ムックも見納め。今年もいいライヴをありがとうです。
年明けのアルバムツアが待ち遠しいです(鬼が笑う)。

# by yoiyamigentoukyou | 2006-10-20 01:44 | ムック

過去と未来、古代の最高文明と現在の最高文明の狭間の廃墟…ただ荒涼とした砂塵の舞う、ノドの地のような刑務所へと招かれた二人の囚人。

…詩的過ぎて、難解と言えば難解。
答えがあるようで、でも無い、かな…心象風景のような視界が最後に引く現実の答えが何とも味気ない(ように感じました)。


同日に同じ雑居房へと収容された有吉と香月。ある日、柔らかく陽が射す房で、静かに香月の喉を絞め続ける有吉の姿が発見される。

「ぼくが、やりました」
単純に見えた事件はしかし、追究する程に混迷を極めていく……



以下、ネタバレ込みの雑感です。


取り敢えず、同性愛がモチーフになっては居るけれど、むしろ極めて排斥されているように感じました。言い方が上手くないんで通じ難いかも知れないんですが、確かにエロティックというか、男性性の象徴的なカットは多かった。でもそれ以上に登場しない女性性の視界が其処此処に感じられた。

片側にはピラミッド、もう一方には宇宙船の発射台。放射状の雑居房には荒行の最中のような青年犯罪者たち…

事前に購入した券に付いていたミニパンフ? の煽りで、何となく最後が自分殺しってオチなんやろーな…っていう感触はあったんですが(緩慢な自殺というか、[ギミーヘブン]に通じる逃避の感触が;)。


でも映像はほんと、綺麗でした(でも、て何じゃい;)。
黄、碧、紫…そして闇。漆黒じゃなくて、無垢の闇。まっさらだからこそ、有吉の情念は深くて、それが享受する・包容の性を知らない香月を追い詰めてしまったのかな。

安藤さん扮する香月の、刺青がなんか良かったです。ペイント丸判りの墨の色には苦笑ですが(墨は皮膚の下に埋まって初めてあの独特の青さになるからなぁ…せめてヘンナで描くとかして欲しかったな;)。
と言っても、あの刺青、描かれてたり消えてたりしてましたが; もしかして有吉にしか視えてないモノだったのかな? 有吉にとっての男性性の象徴とか?

安藤さんのこう、細身の背中とか脇腹とか、隆起する生々しい体躯を。
烈とした熱いんだが冷たいんだか判らない眼差しで追い掛ける松田龍平。雨上がりの虹のシーンでの、あの頬に伸ばされた指が切なかったなぁ…泣けはしなかったけど、迫るものがあった。

雪村役の窪塚俊介も、色気がある若手ですね。有吉のダミーのような、影のような雪村が俗っぽい程、有吉や香月の純粋な狂の部分が強調されるようで。


難を言えば、有吉と香月の体格差が弱いかな、と。香月が華奢過ぎて、ちょっとバランスが悪い(有吉の役は、もっと幼い感じの人の方が良かったのかも; でもあんな眼で物を云う+妖しい眼差しが備わってるような若い役者、他に思い付かないもんなぁ…成宮とか?)。

あと、あのホラーティストな奥さんの映像はどうなんだろ? 焦げる場面のアニメとか発射されたロケットとか…なんか、CGも使い方が唐突だと却って異物に感じてしまうのですが;


映画が好きっつーか、出てる俳優さんが好きって場合以外、お薦めし難い作品かも。前衛過ぎるし、微妙にまどろっこしい…でも冒頭の遠藤さんの独白は好き。

# by yoiyamigentoukyou | 2006-09-06 20:53 | 映画も観る

ヴィジュアル・サイコ・スリラー、という括りになるのでしょうか? 凝った視界に魅力的なキャスティング、其処此処に散りばめられた「判る人にだけ楽しい」遊び要素…色味を緑寄りに飛ばした映像が禍々しい白昼夢っぽい感じで流石、と思いました。


上京したばかりの新米モデル・明日香は紹介されて元モデルの香純と同居することになる。ある夜、向いのラブホテルの、同じ高さに窓を持つ部屋から男の断末魔の絶叫が響くのを聴く。そっと覗いた明日香の視界に飛び込んで来たのは、凄惨な殺戮のリアルタイムな現場だった。

その夜を境に、明日香と香純の周辺で連続猟奇殺人が頻発する。「悪魔」の異名を持つ香純の過去、「偶然」の悪意を畏怖し嫌悪する明日香…拡大する恐怖が二人を苛む。



正直、観るまではかなり怯えていました。スプラッタホラーが本当に苦手で、[ジョーズ][エイリアン]も駄目なら[リング]も駄目(あ、でも[リング]は小説の方で全部読みましたけど)。
そんな自分に、CMで女の子が恐がっていたような、そんな映画が観られるものだろうか、と。

…結果は、そうですね。冒頭の衝撃シーンとオダジョーの最後の方のシーンで薄目になった程度で、割と普通に観終われました。といっても、冒頭の場面がまさに呪となってしまい、その音楽がなると「何、何が出てくんねん…」と緊張したのは事実。ジョーズのあの音楽と同じ感覚ですよ、本当。


結末に関しては、もしかすると続編とか…そういう視野もあってのあの演出なのかな、という匂いも残しつつ、「そう落とすか」、と。額面通りに取ればあの人が犯人か、と見ることも出来ますが、それもミスリードで、そもそもあの人自体が既に葬られて顔面だけ利用されてるのかも知れないって気すらします(全一みたいやなー、と思っただけですが)。

殺しの芸術家、その黒いキスマークだけが確固たる存在の証という、恐怖を演出するモノ…犯人ではある、でも都市伝説のように誰もその本体を暴くことが出来ない変装の達人。

犯人が明日香と香純、二人の周辺で事件を重ねる経緯に関しての理由付けはお粗末な感が否めませんが、それを本筋に置かなければ非常にマニアックな作品と言えるのではないかと(ある程度の映画好きか、もしくは広義のミステリ好きには)。


犯人を追う、動機を探る…そういうミステリ的なものを求めるとガクッとするかも知れませんが、心理的な緊張を上手く操作して観客をミスリードしている作品だと思います。


以下、ネタバレですのでご注意。
# by yoiyamigentoukyou | 2006-02-26 20:59 | 映画も観る

共感覚、という言葉を初めて知った。
例えば特定のアルファベットを見ると、同時にまったく異なる感覚…味覚だったり嗅覚だったりが連動されるという現象らしい。

見るもの、触れるもの総てが自己内部でおいて全く他者と異なるというのは、圧倒的な完全な孤独なのだろう。
けれど。
十人十色というように、視えている世界は個々人で違うのだから、本質的には誰もがちょっとずつ孤独なのだ。
私が見ている空は確かに共通認識と同じで「青い」。だけどその「青さ」の認識は本当に同じだろうか? ならば何故色には番号が必要なのだろう?


盗撮サイトの下請けというジャンクな生業の新介は視覚に特化した共感覚の持ち主だ。言葉での理解を恋人や親友・貴史からは得ていても共感を赦されない己の感覚に罪悪と孤独を抱いている。
ある日、盗撮場所から不可思議な形状の血痕が発見される。一時期都市伝説のように囁かれた[死の売人・ピカソ]のマーキングだと認めた新介の前に現れた女子高生・麻里。

麻里との出会いによって、新介は否応なく[ピカソ]に過剰な干渉を受けることになる。果たして、[ピカソ]は新介の孤独を埋める欠片になりうるのか?



大多数と少数、「違う」という言葉を発することで除外・排除されてしまうという現実という名の悪夢…みんなが可愛いというモノは本当に可愛い? みんなが正しいというコトは本当に正しい? カテゴライズ、ラベリング自体が既にデヴァイン(神の目)による誘導であり洗脳に過ぎないのなら、本当の「青」なんて何処にも存在しないのではないだろうか。

その昔(いい歳になった今もだけど)、私は何に対しても直ぐに「なんでなん?」と訊ねてしまう子供だった。
空と海と絵の具の「青」は同じ言葉なのに色が違うのは何故か?
五線譜上で初めて書いたドレミファソラシド、最初の「ド」と最後の「ド」は鍵盤の位置も音の感触も違うのに何故同じ「ド」と表記するのか?

ピアノの先生は「それが決まりだから」と取り合ってはくれなかった。なので、一ヶ月で辞めてしまった(そうして未だに納得がいかないままだったりする)。
「青」に関しては空と海とは合わせ鏡なんだと妙に詩的な発想で無理に納得させている。


現実を生きている共感覚の方からすれば、「そんな単純な孤独じゃない」と一喝されるかも知れないけれど。
名付けた人、定義した人…遠い過去の誰かが気紛れに発した呪に縛られて、私も誰も、弱い孤独を飼っている。


初めに言葉があった。
だから人は理解者を得、敵を得…疑心暗鬼から疑い、やがて殺戮を犯した。
ダーウィンは進化論を唱える。
けれど私はそれを退化と呼びたい。

例えば一匹の猿が居て、寒さ暑さから守ってくれるはずの体毛が薄かったとする。異質だ、群れでは暮らせない。
或いは声帯に異常があって、彼の声は他の猿の声とは違ったのかも知れない。
森では生きられない、彼は樹下へと下る…やがて同じような存在と巡り会う。

どうすれば「同じ存在」だと伝えられるだろう。確認できるだろう?



…映画の最後の決断は、私には納得がいかないのだけれど。
何故だろう、幼い頃から密かに抱いていた、「本当は人間は何よりも弱く脆い生き物」だという空想を覗かれた気がした。
弱いから言葉を巧みに遣わなければならず、脆いからこそ工夫し言葉を分かち…味方と敵を生まざるを得なかったのだと…

感想じゃないな、これ;
個人的には、江口さんはちょっと孤独感を表現しきれてなかった感じがします。
宮崎あおい嬢は…うーん、役柄によって感じる年齢の感覚が異なるというのは良い役者なのだということなのだろうけれど、ちょっと幼すぎる気が。

安藤さんは現代感に切迫していて、その姿に知らず泣いておりました…


映像も音楽も良かっただけに…最後のあのCGと、あの結論でさえなければ、と思います。

# by yoiyamigentoukyou | 2006-02-04 21:03 | 映画も観る

遅刻寸前、予告編上演中の劇場に滑り込みで拝見([探偵事務所5]の前売りを買いに、時間ギリの中シネ・リーブルに先に行ったもんだから走った走った;)。

各監督・各主演俳優の妖しい魅力が漂う、濃厚な蜂蜜で喉を灼くような味わいのオムニバスでした。

4篇の、贅を尽くした映像美がエログロさと烈しい偏執の様を哀しく、でも詩的にまとめられた一つの作品と呼べるかもしれません。


乱歩を初めてちゃんと読んだのは、10年前の大学一回生の時、友達に誘われて近代文学を考察する学科生有志の課外ゼミに参加した時のテキストが[陰獣]だったんですね(だから誘われたとも言える…まんまと引っ掛かった訳ですが;)。
その後で[芋虫]を読んだのかな、確か。

[鏡地獄]はまた別の機会に読んだのですけど…その狂的な一途さに圧倒された記憶があります。


だもんで、乱歩の”危険な作品”には青春の思ひ出があるもので、映像化を知って以来、本当に楽しみにしておりました。
まぁ、夏に見た[姑獲鳥]が結構笑える出来だったんで、ちょっと[鏡地獄]には不安も感じてたんですけど;

上映作品は、幻想的な悪夢譚であり始まりと終わりを象徴する導入[火星の運河]、鏡の存在ゆえに己の美に溺れた男を描く[鏡地獄]、傷痍軍人とその貞淑な妻の反転した至高愛とその情交を窃視する男の物語[芋虫]、仕える女優への一途な愛ゆえに歪な所有を選んだ男の視界[]の4篇。
[火星の…]だけ短くて、後はだいたい30分くらい。濃厚です、脳髄がくらくらします。

全編に共通して登場するのは浅野忠信さん。役柄は色々ですが、個人的には[鏡地獄]での明智役がとても端正で、翳りというか憂いの艶があって好き。


各タイトルの感想は以下の感じ。ネタバレしてるかも、済みません;





火星の運河
無声? このタイトルだけ未読なんで、実を言うとまだ理解出来てません; とても意味深な永遠回帰のような、実験的な作品だったと思います。
まさに胡蝶の夢のような…境界意識は4篇総てに通じるテーマではあると思うんですが、一番それが幻想的に描かれていたかな、と。

鏡地獄
かなり、原作と違った解釈だったことにびっくり。期待してた鏡の球体はあっさりと流されてしまった気が;
それにしても…[ごくせん]で初めて成宮くんを見た時に感じた、「なんか色気のある男の子やなぁ」という感覚は正しかったとこのフィルムで確信。最近は好青年な役柄が多かったですもんね、でもこういう斎のような役柄の方がニンでしょう、多分。
それにしても、情交シーン自体はあんまりエロティックには感じなかったんですけど(や、R15で済まないくらいの場面ではあったんですけど)、女性の舌を噛むとか、口腔に指を挿入するとか…そういう場面での、背後の鏡面に映る己を意識してるという場面がとても背徳的でゾクっと来ました。二重の相姦というのかな…
明智役の浅野さんも、ちょっと陰性な感じで、従う小林青年も(この人も凄く抑えたエロティックさを感じました)儚くて。
ともあれ、あれだけ沢山の鏡を効果的に使い切ったということに畏れ入ります。
…浅野さんはさ、やっぱ短髪か、もしくは黒のストレートが宜しいと思います。こっそり主張。

芋虫
所有というのはエゴイスティックで、最も純粋な意思表示だと思う。愛するがゆえにその脚を手折り、腕をもぎ…視界すら認めたくはない。
これも原作とは少し解釈が違っているのですが…最後、泣きかけました; 行なわれていることはとても現実感のない、人権や道徳からは離れた行為のはずなのに、とても深い結びつきを突き付けられて動けない。
人の持つ獣性を、窃視することで鑑賞し干渉する男が欲しかったのは、その形骸だったのか心だったのかは見る側に委ねられるものなのでしょう。
覗く男を演じる松田龍平さんは、最後のあの衣装すらどうにかなっていれば様になっていたんじゃなかろうか、と。ちょっと思いました…;
女優さんも須永役の俳優さんも、真に迫った演技でした。
あと、映像になったメタ作品ってこんな感じなのかも、とも思いました。


浅野さんが二役を演じてます。ブリーフ一枚のセミ裸体での体当たりな演技が凄いです、でもコミカル。
厭人気味で人の気配だけでもアレルギーを起こす、その様に見ている私も首筋に爪を立てちゃいましたよ;
[芋虫]とは立場が逆の、同じ所有に関する物語ですね…カラフルだけど、だからこそ手に入らない夢。手に入れたと思ったらそれは、抑えられない腐敗の前にどんどん色彩を失って只のモノに成り下がる。
ぶっちゃけ、ネクロ…とも言えなくもない…満腹の状態での鑑賞はお薦めしかねます。
緒川たまきさんの演技がまた、凄かったです。


全体的に、俳優さんも女優さんも、凄い移入した演技で本当に引き込まれます。向こう側の視界が確かにそこにはあるのだと、エンドロール見ながら思いました。

カップルとか友達ととか…そういう他者と一緒に見るというよりは己の中の陰獣性を意識しながら独りで視ることをお薦めしたいです(ていうか、他人と一緒だと見た後気まずくないか、この映画;)。

# by yoiyamigentoukyou | 2005-11-19 21:06 | 映画も観る